そして奴らは非凡です。

2/12
前へ
/40ページ
次へ
  ――私立盟劉学園。 かの御影グループ総帥が私有地の山を切り開き設立した有名校である。 最新の電脳機器及びセキュリティシステムを導入した学園。 独自の奨学金や特待生制度。 学園同様に短所の見当たらぬ学生寮。 様々な特別制度を設けた学園には、やはりそれなりの家柄もしくは頭脳を持つ生徒が入学してくる。 御影の斡旋がある為か就職率も高く、今や人気校と呼ぶに相応しい。 「金持ちの為にしか機能してないな」 「・・・いきなりですね」  しかし、窓から眺めた学園庭園やその先に見える教会さえ学園の一部なのである。 ここまで囲われた世界もつまらない。 全てを管理された匣の中だ。 呟いた朋貴はふと背後で笑う気配を感じて振り返った。 襟首まで伸びた灰色の髪。 それを確認出来れば誰であるか理解出来る。 「また来たのか」 「またも何も、ここは図書室ですから」 花のように微笑み、桂木 志乃(かつらぎ しの)が隣へ腰掛けた。 ウルフカットの髪から覗く形のよい耳元へと目線が勝手に向かってしまう。 ピアスは朋貴には見るのも痛々しい。 身体に穴を空けるなど、考えられようか。 だが、彼女にピアッサーを貫通させたのは間違いなく朋貴である。 思えばそこから不思議な先輩後輩関係が生まれたのだ。 そう思い返すと何故か笑えた。 「空き部屋同然の図書室だぞ」 「新しく出来た図書館の方が充実してますから」 「本目当てなら図書館に行けばいい、新刊はなかなか面白かったから」 変な後輩だと朋貴は何度も言う。 異常なまでに朋貴を慕い続ける様は、朋貴には全くという程に理解出来ない。 平凡な自分に構う必要性が感じられない、と呆れる朋貴へ志乃は微笑んだ。 「先輩目当てです」 変な後輩だ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加