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「あ゙ぁ?謝罪するようなことしてたのか」
「いえ、特には」
「じゃあ謝んなしょっぴくぞ」
あんたは警察か何かか。
しょっぴく、なんて単語につい突っ込みを入れたくなったが必死に堪える。
ボケよりツッコミ寄り。
そう自覚はしているが、突っ込む相手を選ぶ事を忘れてはならない。
というか、あの一宮 彩鷹(いちのみや あやたか)相手にそんな返答出来るものか。
「いや、先輩が見回りしてるならもしかして下校時刻過ぎたのかな、と・・・」
「バカかお前。クラブ生残して下校時刻過ぎる訳ねぇだろうが」
「帰宅部なんでクラブ生が残ってる時間帯も知らないんです」
困ったように告げれば、学生庭園への入口手前に仁王立ちした男は舌打ちした。
3年S組、一宮 彩鷹。
一宮コーポレーションの御曹子であり、この荒々しい性格ながら風紀委員長だ。
眉目麗しい顔や177cmのスタイルの良い身体は何故か常に怪我を作っている。
Fクラスの者と口論する姿をよく目撃されるからか、誰もが一宮 彩鷹の謎の怪我の正体を知りはしない。
仮に知る者が居ようとも、恐らく勝手な推察により知ったつもりでいるだけだ。
「・・・まぁ良い、とにかく早く帰れ」
「下校時刻じゃないですよ」
「帰れっつってんだろ聞こえねぇのか」
一宮 彩鷹を、朋貴は知っている。
親しくはない。Fクラスに居る程素行も悪くないので接点もない。
ただ偶然知ってしまった。彩鷹と言う男は周りが考えているより気高く
危険だ。
己は睨みつける彩鷹の鋭利な輝きを放つ視線に、朋貴の眉が寄る。
「・・・残っていたら駄目なんですか」
「うざってぇな、いいから早く」
「それとも、今すぐこの近隣から逃れた方がいいって事ですか」
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