黒と三十路

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──「一宮、入って来い」 教室から聞こえた担任の声を合図に、ガラリと、廊下で待機していたあたしは扉を開けた。 緊張と不安に顔をあげられず、俯きながら室内に足を踏み入れ 教卓の側まで歩を進める。 コツリ。一歩、また一歩。ローファーの鳴る音が鮮明に教室に響いて。 あたしが教室に足を踏み入れた瞬間に、ピタリと嘘のように騒ぎ声が止んだのはどうしてなのだろうか。 ……確かにかの教師は言っていた。 “楽しい”を、見つけてみろと。この学校で探してみろと。 だがしかし 意を決し顔をあげて見渡した景色は 『……サファリパークですかここは』 異端の無法地帯だった。 「な、なせ…?」 愉快な世界に一つ、既知の者ぞありける。
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