黒と三十路

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「大きく噂されてたのよ。この学校に転校生だなんて珍しいもの。それに、女の子だなんて」 彼女は猶も微笑を崩さない。 風に揺れる長い黒髪が私の視界に映り込む。 きっと手入れを怠っていないんだろうなぁ。 艶やかで綺麗だなぁ、なんてぼんやり見つめてしまった。 この学校に訪れてからずっと疑問だった事。 どうして男しか見かけないのだろうか。 どうして好奇の目を向けられるのだろうか。 どうして── 「……知らないのね」 『え……な、何を、』 「行きましょう」 ハッとして言葉を飲み込む。 「職員室まで案内しますね」 美少女は真っ直ぐと、私を見つめる。 そのビー玉の瞳の奥は、何も見えずにいた。
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