黒と三十路

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階段を上り二階に出て少し歩いた所。 上部のプレートに、2年3組の文字。 遂にあたしは辿り着いてしまった。 教室の窓や扉は閉まっているのに、騒ぎ声、笑い声がよく聞こえてくるのは何故なんだ。 それは2年3組に限らず、他のクラスからも聞こえてくる。 ……帰りたい。 教室の中に女の子がいない気がする。 むしろ男しか存在しない といった最悪の場面も想定できる。 けれども、ここまで来てしまっては「すみません学校間違えました帰ります」なんてことも出来ないし。 腹を括るんだ、七瀬。 「先に先生が入ってクラスの奴らに説明するから、名前を呼んだら入って来なさい」 『分かりやした松田先生』 「町田だ」 呆れて溜め息を溢すマッチを気にもせず、あたしはダラダラと冷や汗をかきながら考えていた。 「あ、あと──」 思い出したかのように、振り向くマッチ。
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