黒と三十路

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「間違っても、卒倒するんじゃないぞ」 町田は豪快に扉を引き室内に入っていく。 「お前らー席につけー」 笑ってた。あの教師。 笑いながら恐ろしい言葉を残していかれた。 『そ……卒倒?』 廊下に一人残されたあたしは青い顔。一ミリも笑えない。 ざわつく教室を覗くことさえ恐ろしく思う。 ここは大きく心構えるべきなのだろう。 ──「一宮、」 職員室でマッチと初めて対面した時。 「前の学校はどうだった」 彼は平然とした様子でそう聞いてきた。 仮にも初対面だというのに随分深いところを突くのだな。 どう…って言われても 『…楽しかったですよ』 模範解答しか、答えられないのに。
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