476人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
『全方包囲…数、約一万。準備OK。いつでも殺れます』
深い森の上空。
白より白く太陽の光をよく通すマントを羽織る少年。
顔立ちは仮面でよく見えないが体つきからして随分幼いようだ。
先ほど無機質な声を出したのは、少年のすぐ近くに居た髪の紅い人の形をした鬼の男性。
耳は尖り、薄く開く唇から覗くのは鋭く尖った八重歯。
そして、鬼の男性より幾分幼い少年はゆっくり口を開け…―
「殺れ」
何の感情もない凛と透き通る声でそう言った。
『主の仰せのままに』
男性は少年の前に静かに跪付きすくりと立ち上がる。
『月影爪破(げつえいそうは)』
鬼の、鋭く長い爪を上から下に振り下ろせば、勢いで発生した風が周りの風を巻き込みそれが無数の刃となって下に居る大量の魔物達を襲った。
鬼の男性が放った技は四方八方に散らばり、辺りが静かになって、その場に残ったのは上空に居る二人と地上にある元魔物だったものの肉片だけだった。
『御命令(オーダー)は終了しました。次の御命令はございますか?』
「もういい。お前は戻れ、刹那」
『はい。我が主、羅刹様』
技一発で敵を消した刹那と呼ばれた紅い髪の男性はもう一度少年、羅刹の方を向いて跪付き、体を赤く光らせて羅刹の左目へと入っていった。
羅刹と呼ばれた少年は、刹那の入った左目を手で軽く押さえると無表情でその場から姿を消した。
残ったのは刹那が技を放ったことにより作られた大きなクレーターだけだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!