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李美姫さんの作品で、実名らしきものが出るのは、ご本人「李美姫」さんと、もうひとり、「姜美子」(かんみじゃ)さん及び、創氏改名後の「林美子」(はやしよしこ)さんである。
お二人の氏名を例にとって説明してみたい。
まず、「李美姫」さんのほう。
大邱李姓というのは名門である。
だが、李美姫さんが、ご自身で下層出身と言っている。
だから、生粋の大邱李ではない。
そして、先代、先々代が李姓を買ったか、ご褒美といったが、あまりによく働く小作ゆえ、他の小作への模範として、土地の所有と李姓を許す。娘差し出せ(意味は、嫁に取ってやるから、二世以降は李と名乗るが良い)かの、どちらかで、李姓(本貫)を持っていたかも知れない。
また、別の可能性として、本貫なしの氏だけ李さんかも知れない。
そして、作品からわかることは、この李「家」は、本貫どこ吹く風の実業家の家であったことがわかる。
李美姫さんは、幸せな娘さんである。
彼女は、高等女学校から新制大学に進んでいる。
経済的には、日帝支配下では不自由なかったろうが、苦しくなってからも、学校だけは続けさせている。
また、本人が日帝敗退後に、高等小学校しか出ていないが、琴や舞踊だけは師匠について習った良家の令嬢に負けたと、あけすけに語っている。
つまり、習い事に金をかけていない。
この人の父君は、封建美徳を捨て、資本主義社会を生き抜くには、何が必要かを知り、学費に集中投資したのである。
だから、朝日新聞記者という、当時のエリートを、飲み屋の娘が射止めたのである。見事である。
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