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家から学校から逃げて当てもなく歩いてもう3日たった。
自分がいる所が何処なのかわからないくらいには歩いた。歩いて歩いて随分遠くまできたと思う。
3日も立てばそろそろ警察の捜索隊とか動き出すはず。もっとたてば事件として扱われて大きなニュースとして流れるのだろうか。
自分の写真がテレビに出されたら全国の人間誰もが自分を知っている事になる。そうなったら誰かが私を見つけて通報するだろう。
もしそうなればすぐに捕まってしまう。それは嫌だ。そんな事を考えながら愛理は着々と行動した。
「取りあえず今日も化粧で顔変えて…髪型変えて…。あと…服」
手持ちのお金で服を買って着替えた。制服は着替え用に一応鞄に入れてとっておく。
「ん、完璧。」
今日のイメージはどこにでもいる遊び命のコギャル。金髪ウィッグに濃いコギャルメイクで顔全体原型が解らない程黒くなっている。
あとは話し方しだい。こればかりは自分の演技力にかかっている。
「うん。頑張らないと。」
両手を握って今日1日の気合いを入れる。
いつまで逃げきれるかわからない。
でも今、私は逃げたい気分なのだ。今更止まる事は出来ない。
「鬼さん、こちら。捕まえるなら捕まえてみなさいってね。あ、どちらかと言うと私が鬼だったか。」
一人で突っ込んで苦笑する。
一人は寂しいけど開放的だ。
自由に何でもできる気がする。
実際には追われている身だから好き勝手自由に遊び回るなんて事は出来ない。
「つまんない、けどウキウキするのはなんでなんだろ。」
私がやった事は学校の中で大事でも、外に出ればちっぽけな事のように思えてしまう。
「そう感じるのは私がいじめてた方だからだよね。」
ふっとおかしさが込み上げる。所詮私の作った社会なんて大したことはない。水をかければ崩れてしまう泥の城みたいなもんだった。それが壊れたからといってなんの感情もわかない。
湧くとしたら、きっとあいつらにだけ。
私を止めようとした兎野さくら
私を止めた城戸和哉
「ムカつく」
この気持ちはいつまでたっても消えない。
二人を思い出すだけでもやもやとしたものが心の内から溢れ出す。
胸が苦しくなる。
「なんで、私の心はこんなに黒いのかなぁ?」
訳もわからず涙が溢れでた。
誰に対しての涙なのか愛理自身にもわからなかった。
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