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染井高等学校
二年一組
橋下愛理
十七歳
「私は苛めをしてました。」
誰を苛めてたかって言うと同じクラスの兎野さくら。
「クラス全員で蹴ったり殴ったり切ったりしてた。」
苛めの動機?
「さぁ…よくわかんない。なんとなくー苛めたかったから苛めただけ。それだけ。他に理由?特にないかな。」
ふぁ…あくびがでる。今、私は率先して行っていたクラスのいじめがばれて、先生達に生徒指導室に呼び出されてあれこれ取り調べを受けている最中。あれ?この場合事情聴取って言うんだっけ?
まぁ、なんだっていいけど…
「退屈だわ…。」
「…反省も何もしてないような顔だな。」
怖い顔して私の正面に座っているのは生徒指導の城戸哲哉先生。怖い顔で結構有名な先生で皆からキドテツって呼ばれながら恐れられている。
今日も眉間にしわ寄せて、随分怒っている様子。重く響く声からもそれが十分よく伝わってくる。
「こっわ。何その顔。そんな顔して見つめられたら思わず泣いちゃうぞー。」
…なんて泣いているふり、してみても挑発にもならなかった。キドテツはただこちらを怖い顔して睨んでくるだけ。
ああ。
なんかムカつく。
「なんてね。嘘。あのね先生睨んでも別に怖くないよ。…先生の怖い顔…私見慣れちゃったんだから。」
ぐっとキドテツの顔がひっつくくらいまで自分の顔を近付けて話す。
「だから?」
近付いた分だけ、ぐっと後ろにそってしっかり目線を合わせて話すキドテツ。
喰われもしないか…
「別に凄んでも全く私には効かないの。先生、私に反省して欲しいみたいだけど私反省する気なんてないから。だから意味ないの。こんな話し合い。質問には答えたんだからもう帰ってもいーい?」
机を揺らし、甘えた声でお願いしてみる。それが叶わないのは始めから知っているけど。こんなくだらない話し合い早く終わりにしたかった。
「なんで橋下みたいな明るくて元気な真面目な子が苛めなんか…。いや、苛めをしたからにはなにか背景に原因や理由があるはずだ。それを聞かずに苛めをしたというだけでただ処罰して帰らす訳にはいかないんだよ。私たちは君達の為の教師なんだ。あと少しでいいから話を聞かせてくれないかな?」
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