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兎野さくらの信念を壊したあの男が私の社会を壊した。
城戸哲哉の弟であり、学校一の不良だとか噂の城戸和哉。
まだ、あいつに蹴られたお腹が少し痛む…。
「痛むのか?」
お腹を無意識で擦っていたのがばれたのか宮川先生が心配そうに顔をのぞき込む。
「大丈夫。」
なんてことないからと首を振った。
「ね、先生。退学にならなかったら停学かな?」
「僕には分からない…」
「先生、嘘下手。何年教師やってんの。分からないわけないじゃない。」
「さっき城戸先生が言った通りだよ。しばらくは様子見なんだ。保護観察期間?ってやつかな。」
無理して笑って見せる宮川先生。それに対してキドテツは変わらず怖い顔して「ふん」と二の腕組んでこちらを睨んでいる。
当たり前か。大切な弟傷つけられて怒っていない訳はない。
でも、それに関しては悪いと思ってないから謝らない。お腹を蹴られた仕返しだから。
「でも…罰はちゃんと受けるのにみんなみんな甘いよね。そんなに甘やかしといて、いきなり大人になれってそりゃ無理じゃない?」
「お前しだいだ。 少なくともこれからのお前の人生は甘くない。そうだろ?宮川先生も言った通りお前の社会は崩れたんだ。統べてが無くなった上でーさぁ、どう対応する?」
「…私は」
「終わりじゃないぞ。橋下。」
「終わらしちゃいけないよ。橋下。」
キドテツと宮川先生は揃って同じことを言う。
「君の人生はたかだか17年だけでは終わらない。その年で命の終わりになるとしてもまさか「いじめをしてました。」だけでは終われないだろう?」
「勝手に自分を終わらしてるんじゃない。お前はマイナスからやり直しなんだ。」
「勝手な事ばかり…」
「お前も勝手な事ばかり言ってるだろう。お互い様だ。」
「うん。まぁ、もう時間だ。帰っていいよ。けどまたここに来てもらうよ。僕か城戸先生、どちらでもいい話をしよう。」
「嫌だよ…」
私は二人の視線をかわすようにとっとと生徒指導室から外に出た。
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