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「…この声!桃香かっ!」
茂みから、お父さんが飛び出して来た。
「どうしたっ!泥まみれじゃないかっ!」
お父さんは手に持っている傘で雨から私を守る。
泥…?あ…雨が降ってる。
……そんなこと考えてる場合じゃない!
「そんなことはいいの!桜ちゃんが!桜ちゃんが!!」
「お…落ち着けっ、桜香がどうしたんだ?」
「この先で桜ちゃんが犬と闘ってるの!」
私は来た道を指差しながら伝える。
「何っ?!それは拙い!桃香!直ぐに行くぞ!!」
お父さんは傘を投げ、私を背負うと直ぐに走り始めた。
地面が濡れたお蔭で私が通った跡が残っている。
暫く山を走っていると……
「桜香っ!」
「桜ちゃん!」
強い雨の中、地面に突き刺さっている木の棒の横で倒れていた。
お父さんは私を背負ったまま、桜ちゃんに駆け寄る。
「……どこにも大きな怪我は無いな……よかった……」
「お父さん……桜ちゃんは……?」
お父さんに背負われているから桜ちゃんが見えない。
「桜香は大丈夫だよ。
少し切り傷はあるけど、大きな怪我は無いよ」
「良かった…………」
良かった……本当に良かった………
「よいしょっと。じゃあ、帰ろう」
お父さんは私を背負いながら、桜ちゃんも抱えた。
「う…ん……」
私…少し走り疲れたよ……おやすみ……
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