第一章・始まった物語

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「…この声!桃香かっ!」 茂みから、お父さんが飛び出して来た。 「どうしたっ!泥まみれじゃないかっ!」 お父さんは手に持っている傘で雨から私を守る。 泥…?あ…雨が降ってる。 ……そんなこと考えてる場合じゃない! 「そんなことはいいの!桜ちゃんが!桜ちゃんが!!」 「お…落ち着けっ、桜香がどうしたんだ?」 「この先で桜ちゃんが犬と闘ってるの!」 私は来た道を指差しながら伝える。 「何っ?!それは拙い!桃香!直ぐに行くぞ!!」 お父さんは傘を投げ、私を背負うと直ぐに走り始めた。 地面が濡れたお蔭で私が通った跡が残っている。 暫く山を走っていると…… 「桜香っ!」 「桜ちゃん!」 強い雨の中、地面に突き刺さっている木の棒の横で倒れていた。 お父さんは私を背負ったまま、桜ちゃんに駆け寄る。 「……どこにも大きな怪我は無いな……よかった……」 「お父さん……桜ちゃんは……?」 お父さんに背負われているから桜ちゃんが見えない。 「桜香は大丈夫だよ。 少し切り傷はあるけど、大きな怪我は無いよ」 「良かった…………」 良かった……本当に良かった……… 「よいしょっと。じゃあ、帰ろう」 お父さんは私を背負いながら、桜ちゃんも抱えた。 「う…ん……」 私…少し走り疲れたよ……おやすみ……
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