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†
世間では春と呼ばれる季節。
草花が芽吹き、動物たちは冬眠から覚め、新しい何かが生まれる季節。
そして、俺の目の前に旅立とうとする姉が一人。
「もう出るのか?」
玄関で俺、桜香は…姉、桃香の見送りをしている。
「うん。こうしている間にも苦しんでいる人たちがいるんだから」
姉さんは盧植先生の私塾を卒業後……一ヶ月前に……「世の中を変えてみせる!」と言った。
そして、今に至る。
靴を履きながら平然と言う。
腰には、家宝の剣”靖王伝家”を差している。
何でこんな物があるのかと言うと、家系に王室の者がいたからだ。
靴を履き終わり、立ち上がる。
姉さんは桃色の髪を長く伸ばし、羽飾りで髪の両側を止めている。
服装は、普通の布で出来ている、ありふれた物だ。
余談だが、胸がかなり大きい。
遺伝って凄い。
「ちゃんと路銀持った?地図は?………」
母さんがこんなに心配性だとは思わなかった……
それに、一々答えている姉さんもどうかと……
「道中気を付けるのですよ」
母さんの念入りな確認が終わった。
「うん!行ってきます!!」
元気よく家を出る姉さんに向かって小さく手を振りながら見送った。
†
カチャカチャと剣が音を立てながら揺れる。
お母さん、桜ちゃんに見送られ、玄関を開け、外に出た。
すると、村人たちが待ち構えていた。
「え…………?」
思わず立ち止まってしまう。
「桃香ちゃん、頑張れよ!」
「桃香姉ちゃん、帰ってきたら遊ぼー!」
「頑張るんだよ」
「いつでも帰って来いよー!」
「疲れたらいつでも帰っておいで」
村の皆から暖かい声援を貰う。
「皆………うん!この世の中を変えて見せるから!待っててね!」
村の皆に見送られて私は旅に出る。
この間違った世の中を変えるために―――
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