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†
姉さんを見送って、五日後の昼。
「行ってきます」
俺は武器を受け取るために家を出た。
今日も空は晴天で、春の暖かな日差しが気持ち良い。
子どもたちも暖かな日差しを浴びて、遊んでいる。
「桜香兄ちゃん!遊ぼー!!」
子どもの一人が俺に気付いて遊びを誘ってきた。
「遊んでやりたいんだが、少し用があってな……終わったら遊んでやるから」
「えーーー」
子どもは滅茶苦茶不満そうだ。
罪悪感が込み上げてきた。
「後で饅頭買ってやるから……」
子どもの頭に手をやり、撫でながら言った。
「やったーー!みんなー!桜香兄ちゃんが饅頭買ってあげるってー!」
不満そうな態度から一変して、嬉しそうに他の子どもの分も買うよう仕向けやがった!
「ちょっ、おま……」
「やったー!」
「ありがとー!」
それを聞いた子どもたちが嬉しそうに騒いでいる。
「はぁ~……わかったわかった。
後で買ってやるよ。
じゃあな」
「約束だよー!」
俺は子どもたちに小さく手を振りながら鍛冶屋へ向かった。
†
向かう途中、いつもの音がしないので、出来たと思い、建物に入った。
「おやっさ~ん、出来た?」
おやっさんは、鎚を持ってあらず椅子に座っていた。
「おお、来たか。
悪い、失敗した。」
「へー、そうかー……って、ええ?!」
ナチュラルに言われて、ノリツッコミをしてしまった!
おやっさんは悪びれも無く、はっはっはっはと笑っている。
「その代わりといっちゃあ何だが、槍を作ってみた。
それが、コイツだ」
おやっさんは、立ち上がり壁に立てかけてある布で巻かれた槍を俺に持ってくる。
「ほれ、俺の自信作だ」
俺は、布ごと槍を受け取り布を広げた。
その槍は、黒かった。
2m程の柄は、楕円であり黒く艶がある。所々に赤い縦線が入っている。
材質は分からないが凄く軽い。
鍔は黒い龍の装飾があり、龍の口から刃が伸びている。
その刃は、両刃で30cmほどの長さがある。刃の色も黒。
「どうだ?」
俺が槍に見惚れているとおやっさんが話しかけてきた。
「……凄い。これをおやっさんが?」
今まで使ってきた武器と格が違うのが一目で分かる。
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