第二章・江東の麒麟児

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俺はその様子を見て…… 駆け出していた。 叫んでいる女性に近づいて、肩に手を当て、倒す。 「おい!!子どもの場所は何処だ!!!」 恐慌状態に陥っている人にまともな会話は出来ない。 だから、無理矢理落ち着かせるため倒す。正直そんな方法しか思いつかなかった。 「え……あ……」 倒れた女性は痛みに悶える様子は無く、口をパクパクと開けては閉じている。 「子どもは何処にいるかと聞いている!」 「あ……に…二階の…階段を上がった……直ぐ左の…部屋です……」 途切れ途切れだが、話してくれた。 俺は辛うじて原型を保つ二階建ての建物の中を見る。 階段は、入って一番奥にある。 つまり…… 頭の中で、部屋の位置を確認する。 それが終わると燃えている建物の周りを見る。 隣も二階建てだ。火は燃え移っていない。 それを確認すると、隣の建物へと走る。 「おい!君!!」 兵士の声を無視して駆ける。 自慢の跳躍力を利用して、二階のベランダ部分に飛び乗る。 その勢いで、屋根まで上る。 そして、燃えている建物の屋根に飛び移り、頭の中でシミュレートした場所まで走る。 ”闇夜”を構える。 ”闇夜”を高く掲げ、屋根に向かって振り下ろす。 ガシャァァァン!! ”闇夜”は屋根を貫通して二階の部屋までの通路を作る。 もう一回、振り下ろす。 人が二人分通れるほどの穴が出来上がった。 俺は”闇夜”を持ったまま、建物に飛び降りる。 部屋の中は熱気で包まれていて、崩れ落ちていないのが不思議なくらいだった。 その熱気の中、泣き叫ぶ子どもを見つける。 その子どもの傍に駆け寄り、左腕で抱える。 子どもが暴れているが、気にしている余裕は無い。 俺まで死んでしまう。 俺は助走をつけ、屋根まで跳ぶ。 屋根に無事着地すると、隣の建物に急いで飛び移る。 ゴォォォォォォォォォォ!!! 飛び移った瞬間、火が瞬く間に先程いた建物を包んだ。 建物の周りには、兵士がたくさん集まっていた。 それを横目に見て、屋上から飛び降りる。 「~~~~~~~!!!」 声にならないほどの痛みが足を中心に駆け巡る。 抱えている子どもを地面に下ろしてやると、そのまま痛みに転がりまわる。 「ママー!」 「良かった!!」 俺が痛みにのた打ち回っているにも関わらず、感動の再開をしている親子。 まぁ……別にいいんですけどね……グスッ……痛い…屋上から飛び降りるのは無茶だった……
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