第二章・江東の麒麟児

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「貴方がさっきの火事の中、子どもを助けたのよね?」 「そうだが……それが?」 隣を見て、相手を確認する。 声の質からも分かるように、女だった。 薄桃色の髪を長く伸ばし、それを大きな金色の簪?で留めている。 そして、紅色のチャイナ服?と言えるのか分からないほど、露出度が高い。 足は当然の如く、胸元から肩まで露出している。 二の腕から手首まで金で縁取られた大きな袖付きのものを着ている。 腰には金の剣が差してある。 「あら?そんなにじろじろ見られると照れちゃうじゃない」 「あ、すまない」 女性をじろじろ見るのはいけないな。うん。 それにしてもこの世界の女性は胸が大きいな……何故だ? そんなどうでも良いことを考えながら水を一杯口に含んだ。 「お酒だよ」 店のおばちゃんが隣の女性に酒を渡す。 猪口はちゃんと二つある。 「………それで、どうしたんだ?」 話の腰が折られたので修正するために話しかけた。 「はい、お猪口」 「……………」 俺の話を無視して、猪口を渡してきた。帰っても良いですか? 反論しても無駄だと悟り、猪口を受け取った。 女性が、それぞれの猪口に酒を注いだ後、わき目も振らずに酒を呷った。 「美味いわね~~。仕事サボってのお酒は格別だわ」 問題発言入りました~! 上司の方~この人引き取ってやってくださ~い!! 女性は、猪口に注ぎ、もう一杯。 「あら?飲まないの?」 俺はというと、酒に口を付けていない。 サボって~のくだりを聞いた途端飲む気が失せた。 「………これを飲んだら、何かに巻き込まれそうな気がする……」 テーブルの上に猪口を置いた。 サボった理由を俺の所為にされそうで怖い。 「……………………」 「おい、何でそこで黙るんだよ」 もしかしなくても図星だったのか?そうなのか? 「………まぁ、それは置いといて…貴方、何故助けたの?」 置いといて良くないものだがここはスルーだ。自分から話しの腰を折りたくない。 そして、真剣な顔をして何故助けたのか…と聞いてきた。 「殺す人がいれば、生かす人もいる……それじゃあ駄目か?」 適当な理由をつけて、水を飲んだ。 実際に理由など無い。 無理矢理つけるならさっき言ったことと、姉さんのお人よしがうつったくらいだろう。
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