第二章・江東の麒麟児

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       † 突きを重点的に素振りを行った後、近くの川で顔を洗った。(フードは着けたまま) それからは、特に何もすることが無いので城に帰ろうとする。 「そこの黒いの!何者じゃ!」 矢がフードギリギリを掠めて、後ろの木に刺さった。 「…………what?」 驚いてつい、英語で言ってしまった。 というか、返答を待つ前に矢を放つって……聞く気ないだろ……… 「貴様、もしや密偵か!!」 そう頭の中で結論付け、妙齢?の美女は、矢を番えた。 考えている暇は無さそうだ……!! 俺は、”闇夜”を両手でしっかりと持ち、矢の方向を予測するため、相手の目と体勢、鏃の方向の三点を注視しながら素早くじわじわと距離を詰めていく。 「……フッ!」 矢が放たれた。 しかも、連続で。 俺の移動する場所、ピンポイントに…… 俺は、闇夜で全ての矢を叩き落す。 「ほぅ……やるではないかっ!」 弾いたと思ったら、直ぐに矢が飛んできた。 言葉で己の立場を説明することも叶わない。声を発する余裕が無い。 「ちっ………」 俺は舌打ちをした。 それで形勢が逆転するわけも無く。 ただ体力が奪われながらも矢を弾きながら移動している。 弾切れを狙うしか……否、まだ方法はある! 俺はあることを思いつくと、直ぐに実行した。 ここら一帯は開けた土地。 障害物が無い弓にとって最高の場所だ。 だから、ここは相手の土俵だ。 ならば……自分の土俵に連れ込めば良い。 矢を避け、弾きながらも林の方へ全力で突っ走る。
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