第二章・江東の麒麟児

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「将ってどんな仕事するんですか?」 「そうだな。 兵の調練が主な仕事だな。 それと書類の整理や警邏などがある。それらは追々教えよう」 冥琳が懇切丁寧に教えてくれた。 流石、呉の頭脳だね。 「それで………何で俺は選ばれたの?」 ここ一番の疑問。 将を選ぶなら民に呼びかけ募集すれば幾らでも来るのに……質は兎も角として。 「勘よ」 うん。 雪蓮の方から幻聴が聞こえたけど気にしない。 「どうして俺が選ばれたんですか?」 「だから、勘よ」 「………どう「勘」…………」 どうやら幻聴では無かったらしい。 「諦めろ、桜香……お前が仕えようとしている主はこういう奴なのだ」 冥琳がため息を吐いて言った。 頭脳であり苦労人ですか……お疲れ様です。 「こう……見たときビビッと来たのよ。こいつだっ!って」 「あ、そう」 「もー何よその反応はー。自分から聞いといてー」 「はぁ」 厳しすぎるのは嫌だけど、能天気?……ちょっと違うないい加減な人に仕えるのはな…… 「それにしても……外套の下はこんなに可愛い顔してたのね」 「へ?……………な!!」 祭さんの陽動のために外套を取ったんだった! 雪蓮の顔はにやけていた。 祭さんと冥琳は、驚いたと言わんばかりの表情だ。 「確かに。儂もどんな下手物かと思っておったが……よもや少女だったとは……」 「男です!!」 「えー女の子でよくない?」 「良くない!!」 祭さんは真面目に間違えてるけど、雪蓮は絶対にふざけてる!! これ以上弄られるのは嫌なので、走って外套を取りに行った。 外套を拾って、矢を抜くと土を軽く払って羽織る。 「外したほうが絶対良いのに……」 「うるせー」 「あら?主にそんな口を利いていいのかしら?」 「対等な立場を所望する」 「駄目」 「……………」 これ以上の会話は不毛と判断して会話を黙ることで打ち切った。 「俺はどうすればいい?」 「そうだな……とりあえずは祭殿の補佐として仕事をこなしてもらおう。 慣れたら一人でして貰う」 「儂が直々に教えてやろう」 「よろしくお願いします」 「早く帰ろう!お腹が減っちゃった」 我が主、雪蓮の一声で城に戻ることになった。
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