第三章・呉

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「調練を始める前に、今日より将となった者を紹介する!」 そう言った後、祭さんはアイコンタクトを取ってきた。 俺は一歩前へ出た。 「期限付きだが呉の将となった劉凰宵花というものだ! よろしく頼む!」 そう言って頭を……下げない。 頭を下げるということは位が下と言っている様なものだからだ。 「それでは調練を開始する!」 「黄蓋様!」 開始の合図の直後、兵の一人が声を上げた。 「ん?何じゃ、言ってみろ」 「我々はその者を何一つ知りません。 そんな者に命を預けることなど……」 「ふむ…一理ある」 イヤイヤ、上司の命令だから素直に聞こうよ。 それに祭さんも納得しなくて良いから。 「そうじゃの……不満を抱いているものは手を上げい!」 祭さんの言葉に反応して手を上げた者は練兵場にいる全ての兵。 「………だ、そうじゃがどうする?桜香よ」 「祭さん……こうなること知っていたでしょう……」 「はて……何のことやら」 絶対意図的だ。 雪蓮と何か話していたのはこれのことか? 「参考程度に何をすればいいですかね?」 「その外套を外すんじゃな」 ふむ…これか……まぁ…顔ばれてるからいいや。 外套に手を掛け、フードの部分だけ外す。 「「「?!?!」」」 兵士たちがざわつき始めた。 「男かと思ってたぜ……」 「マジかよ……」 「俺好みかも……」 「良かったの、桜香」 祭さんが兵士たちの呟きに、にやつきながら俺を見た。 もう我慢の限界です。 「俺は男だーーーー!!!! 女って思った奴前出て来い! 粛清してやらぁ!! というか、不満を抱いた奴全員出て来い! この槍で蹴散らしてくれる!!」 「では、兵たちを殺さぬよう頼んだぞ」 声がしたほうに振り返ると祭さんがいつの間にか遥か後方にいた。 しまった!これを予測してたのか?! 遂には酒を取り出して、観戦モードに入っている。 嵌められた!! 前を向くと、兵たちが木の武器を構えていた。全員が。 何これ?何で全員分の武器が用意されてんの? 用意周到にも程があるよ? 「頑張れよ~」 後ろから酔っ払いの声がするが放置。 刃の部分に幾重にも外套を巻く。 うっかり刺しちゃいましたじゃ幾らなんでも可哀想過ぎる。 それでも、気休め程度だが……まぁ何とかなるだろう。
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