第三章・呉

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       † 今日の調練は午前中で終わりらしい。 俺の体感では後、数十分といったところだ。 もしかしたら、過ぎているかもしているかもしれない。 分からない――分からない―分からない― 「こらぁ!!ちゃんと走らんかぁ!!」 「はいっ!!」 何故か………俺は兵の調練に参加させられている。 兵士用の弓を持ち、黒一点で目立ちまくりで参加している。 キツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイキツイ 何がキツイかって? 他人と動きを合わせるのがキツイ! 今まで一人孤独に戦ってきた所為だな。 そんな逆にきつくなるようなことを考えながら左右の兵の動きを見ながらそれに合わせて動く。        † 「今日はここまで! 各自戻ってよいぞ!!」 漸く調練が終わった。 兵たちは喋りながら城へ向かっていた。 多分食堂か何かあるのだろう。 「これ、桜香。 寝てないで儂らも行くぞ」 「……了解」 俺はHPは大量にあるが、MP(メンタルポイント)が0に近い。 他人に気を使うのがこれほど面倒なのかと、この世界に来て初めて知った。 「何をしている、行くぞ」 「あ、そういえば、雪蓮が倉から兵法書を持ってこいって……」 「倉?ああ、そこにあるぞ」 祭さんが指を指した。 その方向を見ると、寂れた建物、もとい倉があった。 「これから食事だ、遅れず来い」 「それと、俺は街で飯食うから」 「そうだったのか、日が暮れたときに帰って来い」 「???一応、わかりました」 時間指定で帰って来いって……それまで帰ってくるなってことだよな? 祭さんと別れ、早足で倉へと向かった。        † 倉には鍵が掛かっておらず、無用心だと思いながら入った。 「ゴホッゴホッ!」 長く放置されていたのか、大量の埃が舞っていた。 適当に手に取りながら兵法書を探した。 『完全図解!お酒の全て!』 図解してどうするんだよ。 『文字が読めなくても分かる国語』 それはもう国語じゃない。 『心で感じる呉の全て』 ……………なるほど、分からん。 本を棚に戻し、ため息を吐いた。 「まともな本が無い気がする……」
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