第三章・呉

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遠い目をしながら上のほうを見た。 上のほうにも書物があるので手にとって確認してみた。 『孫子………』 埃被っていてそこしか見えなかったが、これで十分。 孫子は有名な兵法書の一つだ。 とりあえずは、これだけ持っていくことにした。 倉を出て城に戻ったのはいいが、何処に言って良いのかさっぱり分からない。 覚えている場所は……食事を摂ったところと自分の部屋だ。 自分の部屋に戻っても仕様が無いので食事を摂った処に行った。        † 「お、いたいた」 この選択は間違っておらず、もの凄い勢いで書類を片付けている冥琳、穏、雪蓮がいた。 もの凄く声が掛け辛い。 それでも俺は意を決して声を掛けた。 「冥琳、兵法書持ってきたよ」 「……ん?ああ、それはお前が持っていてくれ。 呉の将として、兵法を学んでおいてくれないと困るからな」 冥琳が手を止めずに返事をした。手の勢いは衰えていない。 「あ、うん」 もう読んだことがある…何て言って仕事の邪魔をしてはいけないので素直に返事をしておいた。 長居は無用なので部屋を出た。        † 自分の部屋に戻って、孫子を置くと外套の代えをバッグから出し、羽織って外に出た。 調練で砂埃が酷かった所為だ。 街に出て、まず初めにすることは飯を食べることだ。 俺は昨日の飯屋に直行した。 今度は炒飯を食ってみよう。
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