第三章・呉

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       † それから、何事も無く日が落ち城に帰っても良い時間になった。 城からそう遠くないところをぶらついていたので急いで変える必要も無く、ゆっくりと夜の街並みを見ながら帰った。        † 城に戻ると真っ先に冥琳たちがいた部屋に向かった。 晩飯はどうするのかを聞いておきたかったからだ。 数分歩いて、扉の前に到着し扉を開けた。 「遅かったな、桜香」 「お~そ~い~」 「ふむ……日暮れは遅過ぎたか……」 「遅いですよ~」 上から順に、冥琳、雪蓮、祭さん、穏だ。 全員は椅子に座っており、一つだけ余っていた。 そして、皆が囲っているテーブルには豪華な食事が並んでいた。 酒と料理の量が≒なのは気にしたら負けなのだろう。 「ほら、座って座って早く食べましょ」 「あ……わかった」 雪蓮に促されて一つだけ主のいない椅子に座った。 「さて!桜香の歓迎会を始めましょう!!」 「……飲み会の間違いじゃないのか?」 雪蓮がこの食事会の趣旨を叫んで真っ先に酒を掴んだ。 冥琳はその様子に呆れながらもちゃっかり酒を持っていた。 俺はその様子を眺めながら外套を取った。 この場で外套は流石に無粋だと思ったからだ。 「あれれ?桜香さんって女の子だったんですか?」 対面に座っていた穏が俺を不思議そうに見てきた。 「こんな容姿だけど、男だよ」 別に大して怒るわけでもなく、返事をした。 何と言うか……もう慣れた? 村でも散々言われてたし…… 冥琳から酒の杯を受け取り酒を一気に飲んだ。 「きっつ……」 アルコール度数を表示して欲しいくらいキツイ。 一気に飲むのは無用心だった…… 「おや?口に合わなかったかな?」 俺の呟きが聞こえていたのだろう、冥琳が反応した。 「美味いのは確かだけど……キツイね……」 「そうか……これなんかどうだ? この中でも一番弱いぞ」 冥琳が数ある酒の中から弱いのを選び出し、杯に注いでくれた。 「んっ………これなら大丈夫かな」 確かにさっきのより弱いがそれでも少し強く感じた。 「さっき飲んだのはあのウワバミ専用のお酒だから飲めなくても気にしなくて良いぞ」 「……………」 こんな豪勢な料理を前に酒しか目に入っていないウワバミたちをジト目で見た。 それから俺と冥琳と穏は、楽しく談笑しながら食事をした。 バックに飲み比べの声を聞きながら……
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