第三章・呉

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後ろを振り返り、俺様の獲物、斧を地面に振り下ろす。 その感触に思わずニヤリと笑ってしまう。 ――――殺った。 斧を持ち上げ血がついているのを確認して草を分けて確認した。 「殺りましたか!」 「流石ですぜ!!」 「…………あれ?デクの奴はどこでやんすか?」 「………いねぇな。びびって逃げたんじゃねぁか?」 俺様は転がっている手を掴んで体を引き上げた。 「……………デク」 後ろにいた俺様の一人の子分が呟いた。 「デ……デク!!」 「頭ぁ!何しるんですか!!」 「うるせぇ!! てめぇらから叩き切ってやるぞ!!」 「す……すいやせん!!」 「そう……やってりゃあいいんだよ」 ちっ…敵はこっちか?! くそったれ!!俺様以外の人間は俺様に頭さげてりゃあいいんだよ! 刃向かう奴は俺様に倒されればいいんだ!! あの時もあの時もあの時も!そうやって来た!間違っちゃいねぇ!! 「…………あぁ? あいつ等何処行きやがった?!」 ここに来て怯えて逃げやがったのか!!腰抜けどもが!! ガサガサガサガサッ 「おい!てめぇら!どこに行ってやが……た…………」 音をしたほうに振り向いた。 俺様の頭の中では子分たちがへこへこ謝りながら来る筈だった。 なのに……なのに…… 血まみれで宙ずりにされてんだ? 「さて………最後の一人はだ~れだ?」 木々の向こうからさっき聞いた声がはっきりと聞こえた。 「てめぇ!!出て来い!!俺様の斧で叩き切ってやる!!」 「出て来い……って言われて出てくる奴がいるのか? あ、ここにいるか」 今度ははっきりと後ろから聞こえてきた。 「てめぇか……俺様の子分を殺したのは……」 後ろを振り返ると背は俺様の半分くらいしかない、真っ黒な餓鬼がいた。
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