第三章・呉

18/25

1242人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
       † 俺の目の前には斧を持った野性的な大男が。 顔には汗がびっしょりと付いており気付いていないのか拭おうとはしない。 顔色は悪くは無いが赤すぎる。 「会いたかったぜぇぇぇ!!」 目を真っ赤にして狂ったように斧を振り上げ、攻撃してきた。 「ほいっ」 力任せの単調な攻撃。 こんな攻撃で俺に勝とうなんて片腹痛いな。 斧は何も切れずに地面に激突し、地面を砕いた。 「避けんじゃねぇよ!!」 「そりゃあ、無茶な注文だな」 無茶苦茶に叫びながら、無茶苦茶に斧を振り回し周りの木々を地面を傷つけていく。 「自然破壊もいいとこだな」 「ああああああ!!!」 「……聞こえてないか…」 こんな平凡を望む一青年に向かって斧を振り回すとは……罪深いな~。        † 「もう厭きた」 最初の攻撃かは10分は足っただろう。 そう呟いて一旦距離を取って拳を構える。 このフィンガーレスグローブ(指取り外し可)には鉄板が仕込んである。 最初の敵はこれで倒した。 その次の敵は、さっきの敵の武器を奪って倒した。 その繰り返しで敵を倒してきた。 「罪も無い民を理不尽に殺し、数多くの平和を脅かした盗賊の長よ。 その死をもって贖え」 今も目の焦点があわず狂ったように斧を振り回す大男に向かって駆けた。 斧を振り回したときに生じた風と駆けたときの風でフードがとれた。 斧なんて重量のある物を力任せに振り回しているのだから、その分隙も多くある。 その隙を狙って―――打つ。 「がふっっ!!」 大男は草むらに向かって勢いよくぶっ飛ぶ。 フードがとれたことを気にせず草むらに向かって歩く。 「はっはっはっはっはっはっ」 目を丸くし、動悸が激しいようで過呼吸のような状態になっている。 「さぁ……仲間のように―――逝け」 右手を思いっきり振り上げ顔面目掛けて振り下ろした。 「――――ぇ」 「ん?」 拳を止めた。 小さく必死に何かを呟いている。 最後の言葉くらいは聞いてやろう。 「に―――じゃっねぇ…」 「はっきり言ってみな」 「に…人間の…目じゃ…ねぇ……」 「そう……じゃあ、人間じゃないのかもね」 止めた拳を振り下ろした。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1242人が本棚に入れています
本棚に追加