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†
血まみれの外套を左手で持ち、右手で使わなかった闇夜を持って城に帰っていた。
「目……か」
最後に大男が言っていた目。
盗賊狩りをしていたときも目について言われた。
だから村の人に、目がおかしくないか?と尋ねても、綺麗な空みたいな色の目だよ、と返答されるだけだった。
川に自分の顔を映して見ても普通の目だった。
何がおかしいのか全く分からない。
「雪蓮たちにも聞いてみるか……」
さっきまで暢気に歩いて城に帰っている俺が馬鹿だった。阿呆だった。ゴミだった。すみません。
†
「桜香……いったいこれはどういうことだ?」
「いや……あの…………すみませんでした」
土下座状態からさらに土下座。
頭が割れそうです。
「敵は壊滅……これは良しとしよう。
では……お前に監視をつけていた者の報告では……”一人”で向かった……と」
「え…いや……その…一人で行って来いっていう口振りだったじゃないですか……」
「私は”一人で行け”と言ったのか?」
「言ってません」
冥琳が怖いよぅ怖いよぅ…雪蓮……怒られているとき高みの見物していてごめんなさい。
「近辺の村の様子は賊がいなくて嬉しい……ではなく賊より恐ろしい悪魔が現れたと噂していたぞ?
護るべき者が護る者を怯えさせてどうるする?」
「どうしようもないわね」
雪蓮の横槍入りましたー。
わき腹に入りましたー。
「ぐっ……」
「さらに、倒したのは只の旅人って話にもなってる……呉に利益は全くなし。駄目駄目じゃない」
「………………本当にすみませんでした」
何回謝っただろう。
何回額を地面に叩きつけただろう。
額から血を流しているのに気にもしないって……こいつらは人じゃない。
美女の姿をした鬼だ。悪鬼羅刹だ。
「「何か変なこと考えなかったかしら?」」
「いえ、何も」
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