第三章・呉

19/25

1242人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
       † 血まみれの外套を左手で持ち、右手で使わなかった闇夜を持って城に帰っていた。 「目……か」 最後に大男が言っていた目。 盗賊狩りをしていたときも目について言われた。 だから村の人に、目がおかしくないか?と尋ねても、綺麗な空みたいな色の目だよ、と返答されるだけだった。 川に自分の顔を映して見ても普通の目だった。 何がおかしいのか全く分からない。 「雪蓮たちにも聞いてみるか……」 さっきまで暢気に歩いて城に帰っている俺が馬鹿だった。阿呆だった。ゴミだった。すみません。        † 「桜香……いったいこれはどういうことだ?」 「いや……あの…………すみませんでした」 土下座状態からさらに土下座。 頭が割れそうです。 「敵は壊滅……これは良しとしよう。 では……お前に監視をつけていた者の報告では……”一人”で向かった……と」 「え…いや……その…一人で行って来いっていう口振りだったじゃないですか……」 「私は”一人で行け”と言ったのか?」 「言ってません」 冥琳が怖いよぅ怖いよぅ…雪蓮……怒られているとき高みの見物していてごめんなさい。 「近辺の村の様子は賊がいなくて嬉しい……ではなく賊より恐ろしい悪魔が現れたと噂していたぞ? 護るべき者が護る者を怯えさせてどうるする?」 「どうしようもないわね」 雪蓮の横槍入りましたー。 わき腹に入りましたー。 「ぐっ……」 「さらに、倒したのは只の旅人って話にもなってる……呉に利益は全くなし。駄目駄目じゃない」 「………………本当にすみませんでした」 何回謝っただろう。 何回額を地面に叩きつけただろう。 額から血を流しているのに気にもしないって……こいつらは人じゃない。 美女の姿をした鬼だ。悪鬼羅刹だ。 「「何か変なこと考えなかったかしら?」」 「いえ、何も」 額を打ち付けた数+1
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1242人が本棚に入れています
本棚に追加