第三章・呉

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       † 呉について穏に説明を受け、次の日には「じゃ、そういうことで、頑張ってね~♪」と御気楽君主に言われ、何が何だか分からないまま隊を一つ任された。 隊と言うのは、工作部隊だ。 敵の本陣に潜入し、混乱させ、こちら側を限りなく有利にするお仕事だ。 そんでもって、人数は少数。 結して人材を最小限にされたわけではない。少数精鋭部隊だ。 もう一度言うが、結して人材削減などでは無い。 そして、隊を任され早六ヶ月。 ……え?時が進み過ぎ?知るか。何も無かったから書くことも無いんだよ。日本人特有の文化”察する”を発動させろよ。 それで、今現在一度も出番の無い俺の部隊の訓練中だ。 「どこにいるかな~……」 実際には出番は用意されていた。 されてはいたのだ。 しかし、我が君主様が何と軍を率いて突撃→敵全滅のコンボで出る幕が無かったのだ。 「そこだっ!!」 思考を一旦終了させ槍の石突きで草むらを突いた。 「いてっ!」 声を上げて草むらに飛び出してきたのは我が愛しい部下だ。 「気配をちゃんと消せ!」 「無理ですよ~…気配を消せなんて~」 「弱音を吐くな!為せば成る!!」 「へ~い……」 この弱音ばかりを吐くのは……… 「名前なんだったっけ?」 「その件は何回目ですか?!」 「すまん。忘れた」 「張令<チョウレイ>ですよ!!」 「そう言う名前だったな。 すっかり忘れてた」 この張令は男で背は平均、筋力も平均、顔も平均。 The普通を体現している奴なのである。 「じゃあ、張令。 最初に見つかったから奢りな」 「お金が……」 この訓練は”かくれんぼ”だ。 場所はある一つの山の中。 部下(四人)を放ち、一時間後鬼(俺)が山の中に入って四人を探す。 制限時間は昼まで、約2時間だ。 これがルール。 部下の一人の提案により、最初に見つかったものは昼飯を奢る。 逆に俺が誰も見つけれなかったら俺が奢る。 これが追加ルール。 そして一番最初に張令が見つかったのだ。 「張令が暇になっちまうな……素振りでもしてろ」 「はい…………」 暗い雰囲気のまま腰に差していた剣で素振りを始めた。 「さてさて……お次は誰かな~?」
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