第三章・呉

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       † 「よ~し、お前ら飯行くぞ」 「お、隊長! 遅かったじゃねぇか! って、またかよおい!!」 「その言葉、この槍で打ち返してやる。 またかよおい!!!!」 韓心を伸し、背中に担いで部下たちの許へ戻ったと思えば…… 「張令が伸びてるじゃねぇか!! 飯代どうしてくれんだよ!!」 「……俺の心配はしないんですね……」 のそのそと起き上がったのは頭に大きなたんこぶを作った張令だ。 「あ、起きた。行くぞ。飯だ、飯」 「……はい」 とぼとぼ、と歩き始める張令はいつもより頼りない空気を作り上げていた。 「周艦。これ頼む」 韓心が移動に邪魔なので、隣にいた禿に渡す。 「うぉぉぉぉぉ!! これを持つなんて、どんな体つきしてんだよ! チビのくせに!!」 「あ? 何か言ったか糞禿。 お姫様の暇つぶしに付き合わせてやろうか?」 「ナニモアリマセン」 お姫様とは雪蓮のことだ。 戦闘を強いられそうになったとき、こいつを盾に逃げた結果、俺が助かった代償として虎と馬の素敵な調和を刻まれたらしい。  街の行きつけの店に入り、昼飯を注文する。 「酒くれー!」 「やめろ! 午後は警邏があるだろうが!! 酒の注文はなしで!!」 周艦が酒の注文をするので、それを阻止する。 後で起こられるのは俺なんだぞ!! 「おばちゃーん! お酒ー!!」 「言った傍から誰だ!! って、雪蓮!?」 違和感なく、俺らの卓に紛れ込んでいたのは紅の衣装に包まれた孫伯符殿。 俺の記憶だと城内でお仕事中なのだが……。 「今日は部下の奢りらしいじゃない。 なら、部下である桜香は私に奢らないといけないのよね?」 「ね? じゃない!! 誰だ、嘘をついた奴は!」 「俺ですよ」 不適な笑みを浮かべるのは、何のとりえも無い普通の男児、張令。 「何故そんな嘘を吐いた! 鉄拳制裁から斬首刑。 好きなのを選べ! オススメは斬首刑だ!」 「あ、お酒どうぞ」 「ん? ありがとー。気が利くわねー」 「もう手遅れだと!?」 雪蓮の器に注がれる酒を見ることしか出来ない俺。 持ち合わせの金で足りるのだろうか? ――これが初めての旅
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