第四章・始まりは桃園で~桃の香りと桜の香り~

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『綺麗な桃園がある』 そう聞いて、1人分の酒を持ってやって来た。 淡い紅色の花を満開に咲かせ、散っていった花弁が空を彩る。 外套のフードを取って、その景色を視界一杯、眼に映す。 綺麗だの、雅だの言葉で表現することが憚られるような景色だ。 食事処の女将がオススメするのも納得がいった。 近くの樹の下に腰を下ろす。 杯に酒を注いで、頭上に掲げた。 「乾杯」 口元に杯を持っていき 「お、花弁」 酒の上に浮かぶ花弁に頬を緩ませながら、花弁ごと酒を呷った。 「うわーすごーい!!」 「これは……」 「お酒なのだー!」 「ここが……あの」 背中の方から、騒がしい団体がやって来た。
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