第四章・始まりは桃園で~桃の香りと桜の香り~

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黄色い声に俺は思わず振り返ってしまった。 赤髪にコミカルな虎の髪飾りを着けた少女を先頭に、俺と全く同じ桃色の髪を持っている巨乳さん、綺麗な黒髪をしている巨乳さん。そして、白い服を着た男が1人。ハーレムか、爆発しろ。 ちょっと邪念が混じってしまったが花見に意識を戻し、酒を注いで再び飲み始める。 それにしても、全員が豪華な服を着込んでいる。旅芸人か何かか? 「おっ酒ー、おっ酒ー!」 「こらっ! 鈴々! もう少しこの風景に目を……はぁ」 声から察するに赤髪の子が黒髪の人を困らせているようだ。 しかし、酒だけに目を遣らずにこの桃園も楽しめばいいのにな。それだけで酒の美味さは増すはずだ。 もう一口、酒を口に含む。 「あれ? "ご主人様"? どうしたの?」 吹いた。 な、何なんだ!? 3人の美少女に囲まれて、しかもその1人にご主人様などと呼ばせているだと? これは世のため人のために殺すしか……。 「い、いや、ちょっと感動してたっていうか」 「お兄ちゃん! 早くお酒を飲むのだー!」 赤髪の少女、さっき鈴々と呼ばれていた、子が叫んだ。 今度はお兄ちゃんだと!? これは拷問も考慮しておかないとな……。「はぁ……だから、いや、もういい。"ご主人様"、お酒の用意をしましょう」 やつは俺の、いや、俺らの敵だ。今確信した。東西の知識を融合した最高の拷問を行うしか……。 「と、言ってもこんなところで血の花を咲かせるのは無粋だな……」 この荒れる心を静めるために、またまた酒を飲む。 また後ろの方がワイワイと騒がしくなってきた。というよりも鈴々と呼ばれた子が一方的にはしゃいでいるだけだろう。 「ほらはやくはやく! "桃香"お姉ちゃんも!」 また、吹いた。 何か見たことあるなー、とか思ってたらやっぱりか! 出発したときと服が違いすぎて分からなかったぞ! こんなことしている場合じゃない。逃げなければ。 俺は姉さんに旅をしているなんて言ってない。姉さんは俺がまだ家にいるだろうと思っているだろう。 こんなところで会ったりしたら…… 「忍び足で行けば問題ない。思い出せ、敵の背後に近づく感覚を……」 「そこの怪しいやつ! 何者だ!」 黒髪の人の声に俺は振り返る。あろうことか黒髪の人は俺に向かって"青龍偃月刀"を突き立てていた。
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