プロローグ

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十一月十五日。月曜日。 風の強いこの日の空を見上げると、雲の流れが異常に早かった。時も同じように早く進んでいるのではないかと思うくらいだった。 ずっと雲に隠れていた太陽が顔を覗かせた時、金子達也の表情は晴れやかになった。良かった。雨が降るのではないかと心配していたのだ。特別なこの日を雨で潰されたくはない。一ヶ月前から今日を楽しみにしていたのだから。でも、もう大丈夫そうだ。空一面を占領していた雲は風で流され、太陽と入れ替わってくれた。今日は想い出に残る楽しい一日になりそうだ。 穏やかな光を浴びながら、南大野の駅前で辺りを確認していた達也は、しきりに腕時計をチェックしていた。 九時五分。 待ち合わせの時刻より五分遅れている。全く、児島美沙子は何をしているのだ。今日の計画は彼女が立てたものなのに。
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