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ある国の貧しい村でひとりの女の子が生まれた
その子は十見(とおみ)と名付けられた
十見は母親と二人で暮らしていた
父親はいない
ある男が十見の母の子宮に勝手に命あるものを宿らせたのだ
そう
十見の母は家が貧しいため実の両親から売りにだされ
体を知らない男たちに犯されていった
そうして生まれたのが十見である
今はかろうじてその恐ろしい境遇から逃れ
ベニヤ板でできた小屋ともいえないところで暮らしている
当然冬はとても寒く
暖炉さえないベニヤ板の上で二人毛布にくるまり
ただ冬が終わるのを待っていた
十見の母は毎日虚ろな目をしていた
ただ無心に十見の世話をしてきた
状況がよくなることはなく
まわりに親戚もおらずただ孤独のなかで生きてきた
まだ生まれて間もない十見は何もわからないままずっと母親の手のなかで眠った
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