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「それに問題はそこじゃない。貴様の常習性だ」
「これから気をつける」
「これからじゃない今からだ!今ここでそのローファーをちゃんと履き直してボタンを閉めてズボンを上げろ!」
「……うるさい」
「なっ……!」
朝から変な奴(内真正変態一人含む)にばかり絡まれてしまうせいで、思わず本音が漏れてしまった。
俺の言葉がカンに障ったのか針浦はわなわなと震えだす。こうなると今まで以上にうるさいぞ、この生真面目女は。
「私は貴様を更生してやろうと毎日毎日注意をしているんだ!そんな私の努力を貴様はうるさいの一言で終わらせるのか!?」
「無駄な努力だったな」
「誰のせいだ誰の!?大体貴様は一年生の時からそうやって私の注意をまるで聞こうともせずに……!」
「なぁ針浦」
「む……な、なんだ」
「俺はボタン閉めて、靴ちゃんと履いて、ズボン上げりゃあもう注意されないのか?」
「え?」
何かが腑に落ちない。
針浦が俺の顔を見つめたまま少し固まっていたので、わざとらしく頭を掻いてみた。
こいつは普通なら一番注意すべき俺の髪の事には、何も言ってこない。
「まぁ、あとは眉をいじらずに授業をサボったりしなければ何も……ま、まさかまた何か貴様はやらかしたのか!?」
「……何もしてない」
俺と関わろうともしないような、ただ頭ごなしに叱り付けてくる他の奴らとは違う。
こいつはイメージとか噂だけで俺を判断してるんじゃなくて、本当に俺が校則を破っているだけだから注意してくる。
……人気があるのが、こういう所からきてるのだったら少しは納得できる。
「……?何が言いたいんだ?」
「お前、何で俺にばっか注意すんの?」
「……喧嘩を売ってるなら買うぞ?」
「は?」
「貴様は一体今まで何を聞いていたんだ!何で自分にばかりだと!?自分の格好を見てもう一度その言葉を繰り返してみろ?私は」
「いや、他にもこんな格好してる奴は」
「常習性だ馬鹿めッッッッ!」
「おお……」
針浦の響き渡る程大きな声に、思わず感嘆の声が出る。
疲れたのか、針浦は肩を上下に動かしてハァハァ言い出した。
怒るのって体力いるんだな。
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