変化の兆し

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「あんた何で……」 「ん?どうした」 何でまだはまってんだよ!? 確かに回りから見たら近寄りがたいシチュエーションである事は分かる。だけど通報くらいしろよ! 一日以上飲まず食わずのくせに、コイツもコイツで何でケロリとしてんだよ!?助け呼べよ! 「この街どうかしてるわ……」 「この街?おいおい、故郷を悪く言うもんじゃないぜ。お前も大人になりゃあ一度や二度は必ず帰ってきたくなる場所なんだよ」 「そういう話じゃない」 昨日とまったく変わらない様子で話す所を見ると、このシチュエーションもまったく堪えてないらしい。 なんか出てきたら怖いから、このままほったらかしにしといた方が安全な気がした。 「さぁ、朝に約束したよな?リポピダンD、買ってきてくれないか」 「えーっと……」 「俺が知る橋口家の男は全員自分の言葉に責任を持てる奴だったぜ?」 俺が知る橋口家の男って何だよ。 俺ん家は俺と親父しか男いねぇよ。……待てよ。つまりこいつは親父の知り合いなのか? 「金なら気にするな。ちゃんとこの時代の金で返してやる」 未来から来ましたよ設定はまだ継続中なわけね。 「……分かりましたよ」 「頼んだぞ。あ、200mlの一番小さいやつ1本で良いからな。とりあえずはここから脱出できれば良い」 「はいはい……」 まぁこの良い男が仮に変人だとしてもリポピダンD飲んだだけで綺麗にフィットしてるマンホールから出てこられるとは思えないので、俺は“ある意味怖いもの見たさ”で近くのコンビニまで歩いていった。 中に入ると、リポピダンDを持ってレジに行く。 そしてあっさりとリポピダンDを手に入れると、俺は良い男の待つマンホールへと戻ろうと足早にコンビニから出ようとした。 しかし。 「いてっ」 こういう時に普段の行いの良さが出るんだとしたら、俺って結構悪い奴なのかもしんない。 「あ」 「うわっ……ビッショビッショじゃん」 コンビニの扉なんて狭いんだからちょっと待てば良いはずなのに無理矢理入ってきた人に当たってしまい、その人が持っていたコーヒーが零れてその人の服にかかってしまった。
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