変化の兆し

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その人の服って言うか……制服だな。ここら辺じゃ有名だから一目見ただけで分かる。 不良の集まりなんて称されるような高校の制服だ。 ちょっと話変わるけど……よく注意される俺の茶髪。母さんから受け継いだこの茶髪、俺は好きだけど……こういう状況になると少しだけ黒髪が良かったなって思ってしまう。 なぜなら。 「ケンカ売ってんのか?」 不良相手だと同類って思われて、すぐに絡まれてしまうんだよ。 「……ドンマイです」 「来いよ」 「俺用事が」 「良いから」 「…………。」 駄目だ。 仲間が何か揉めているのに気付いたのか、コンビニの近くにいた仲間らしき人達二人も集まってきた。 「こっちだ」 前に二人、後ろに一人、真ん中に俺と軽い人見知りの俺にとって嫌なパーティーが出来上がった。 そのままコンビニの裏のゴミ捨て場みたいな場所に連れて行かれる。 「分かるよな?弁償、5万」 着いて早々俺の小遣い半年分くらいを要求された。 無理だ。 5万を意味無く手放すくらいならチロルチョコ何千個か買いたいのが甘党の俺としての本心だ。 「今手持ちが……」 「財布見せてみなって」 ヤバい。 財布は駄目だ。 今は姉ちゃんに靴を買ってきて欲しいって頼まれていて2万ほど入っている。 何か。 何か無いか。 そ、そうだ……! 「これじゃ駄目っすか?」 俺は恐る恐る手の中のリポピダンDを差し出した。コーヒーがかかってしまった男が眉をピクピクさせる。 「タウリン1000mg配合で許すわけねぇだろうが!」 案の定怒られた。 「ふざけてんだろコイツ」 「いいから財布出せって」 「あ、ちょっ!」 無理矢理ポケットに手を入れられそうになったので、俺は思わずその手を叩いてしまった。 「あ?」 やってしまった。 こーいう人は反抗されるとプッツンきちゃうんだ。 「この!」 「うわっ!?」 横腹を蹴られそうになり、俺は思わずリポピダンDでガードした。 予想外にもリポピダンDのビンは割れず、硬いビンがスネに当たって俺を蹴ろうとした人は屈んで悶えだす。 「すんませんっしたぁ!」 5万は流石にないわぁと思ったけど、本当に染みが少しできたようだったので一応謝って俺は逃げ出した。
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