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「追われてる……?ほほう、なるほどなるほど」
変態は俺が今走ってきた道を見遣り、不良共の姿を確認すると一人で頷き始めた。
「あいつらの女にでもちょっかいだしたのか?」
「んなことするか!」
「じゃああいつらの男にちょっかいだしたのか?」
「なおさらするか!」
ていうかそんな話してる場合じゃない!しかし俺がじゃあなと言って走り去ろうとすると、変態は「だから待て」と言ってまた俺を制止してきた。
「なんだよ!?」
「手がふさがってるこんな状況で目の前にリポピダンDを置かれても、俺にはただの放置プレイとしか思えん。キャップを開けて飲ませろ仙利」
「んな時間あるか!できることならあいつらに頼んで足止めでもしててくれ!」
「足止めなんかいるか。あいつら止めてやるから早く飲ませろ」
「…………。」
変態は本気のようだった。
まったく動揺している様子も見えず、大口を叩いているようにも見えない。逆に余裕が見えるくらいだ。
姉ちゃん、俺、こいつ信じてもいいのかな。
「早く飲ませろ」
「……わかったよ!」
俺は地面のリポピダンDを乱暴に取ると、キャップを開けて屈んだ。
「オラ!口空けろ!飲め!」
「お前……その台詞、もっと違う状況で聞いてみたかったぜ……」
何故か顔を赤くした変態は、俺が口に突っ込んだソレ(リポピダンD)を一気に飲み干していった。
俺がリポピダンDの口を離すと、奴は目を閉じる。
『リポピダンD摂取量198mml――システム稼動後、チャージモードに移行します』
「は?」
変態の声じゃない。
機械的な女の声が、変態の中から発されたようだった。
「どいてろ仙利」
「へっ?お、おう……」
「んっ……ぐっ……!」
俺が3mほど後ずさりすると、変態は眉間にシワを寄せてなにやら気張り始めた。
「う……おぉおぉぉおぉおぉおぉぉおぉおぉおぉぉおぉおぉおぉぉおぉ!!」
「なっ……!?」
変態の筋肉が急激に膨れ上がる。
そしてビキビキという鈍い音と共に、マンホールの周りのアスファルトにヒビが入り始めた。
なん……だと……!?
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