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「ぶるぁあぁあぁぁ!!」
「おぉお!?」
カッと目を見開き一際大きな叫び声をあげたかと思うと、アスファルトの道路は完全に裂け、その下から奴の右腕が出てきた。
次の瞬間には左腕も姿を現し、両腕で道路を押し下げると奴は腕力だけで5mほど飛び上がる。
そして何事も無かったように着地し、こちらを一瞥すると不良達に向き直った。
「すぐ終わらせる。待ってろ」
「!!」
こ、こいつ……。
下も履いてないッッ!!
「な、なんだテメェは!?」
「近寄んな!!」
2m近くある全裸の良い男が突然飛び出してきた事にビックリした(いたって普通)のか、不良達は足を止めて後ずさりし始めた。
本当に何なんだよアイツ……?
「力加減は大得意だからな。痛くはしない」
「う、うわぁあぁぁ!」
三人の内の一人が変態の鳩尾を目掛けて拳を振るう。しかし奴は避ける素振りも見せず、パンチを鳩尾にもろに受けたがピクリとも動かなかった。
その後も不良は怯みながらもパンチを繰り出すが、奴は表情一つ変えずに全て体に受ける。
「露出している急所を狙わない事は褒めてやる。だが……拳ってのはな」
奴はフルチンのまま腰を低くすると、不良の足元のアスファルトに目線を落とした。
「暴力に使うもんじゃない」
ドゴッ、と。
見えなかった。
奴はその姿勢から、いつの間にか拳をアスファルトに突き出していた。
そしてアスファルトは一部分だけ陥没し、奴はその姿勢のままこう言った。
「仙利に……あいつに手を出すな。さもなければ、俺は容赦という言葉を一瞬だけ頭から消さなきゃならなくなる」
「ひぃいぃ!」
三人が同時に走り出す。
奴はそれを見ると、やれやれと言いながら俺の方へ戻ってきた。
思わず俺も身構える。
「お、お前……?」
「俺?言っただろ。改造番号ABE-3、もこみちだ」
変態はウインクをしながら手を差し出してきた。なんの為の握手なのかは分からない。
「気さくにもこみちと呼べ。俺も勝手に仙利って呼んでるからな。俺は……――」
俺自身、まだ知らなかったんだ。
この変態との出会いが、俺の人生に大きな影響を及ぼす事を。
「……――お前を抹殺する為に未来から来た」
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