変化の兆し

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何故?何故このマンホールにはまった良い男は俺の名前を知っている。 そしてもう一つ。 マンホールにはまっていて二の腕辺りから上しか見えないが、見えている部分は全て肌が露出している。 つまり服を着ている様子が無い。 少なくとも、上半身裸。最悪、露出狂。 まとめると、何でマンホールにはまった露出狂の可能性がある良い男が俺の名前を知っている? あれか。 俺が落とした生徒手帳を拾って、わざわざ届けに来たところか。 違う落ち着け。 マンホールにはまってるのと全裸(もしくは上半身裸)になっている所の方がもっと問題だ。 「なぁに……驚くこたぁない。俺はお前の次にお前の事を知っている」 「帰っていいですか?」 「落ち着けよ、マイブラザー。目の前の困っている人を放って帰るような奴じゃないだろ?お前は」 目の前の意味不明な変態をスルーしたいだけなんですけど。 「さぁ……ナニはともかく、俺をここから出してはくれないか?マイブラザー」 俺はアンタのブラザーになった覚えは無いとか、どうやったら気を付けの姿勢でマンホールにはまれるのかとか、聞きたい事は山ほどある。 けど。 やっぱり一番聞かなきゃいけないことは。 「何で俺の名前を知ってるんですか?」 「……ふん。自分に有益な情報を得るまでは相手を拘束し続ける……流石は橋口家の男だ」 由緒正しくもない普通の家系だよ。 それに拘束ってお前が勝手に一人でマンホールにはまってたんだろうが。 「俺はお前の事を知っている。なぜなら、俺は未来からやって来たサイボーグだからだ」 「…………。」 やっぱりそういうタイプの人か……。 「改造番号ABE―3、もこみちと名付けられた」 「さよなら」 「ああっ!待って!止まれ!止まれって!頼む抜いて!ストップ!ストォオォォェォップ!」 決して後ろに振り返らない。 俺は奴の声を背中に受けながら、その日は帰り道をいつもより少し早足で歩いていった。 そして次の日。 「よぉ」 まだいたよ。
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