始まりの詩

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「ほら、一樹、ここが新しい 学校よ!」 隣から母の声が聞こえる。 「早く友達できるといいわね」 「東京は楽しいわよ」 …さっきからずっと喋りっぱなしだ。 俺、斎藤一樹は 今日、地方から東京に引っ越してきた。 家族は母と俺のふたり。 父は…… 三ヶ月前、事故で死んだ 父は莫大な財産と権力をもっている自慢の父だった そねおかげで 金目的、権力目的などで 俺達、家族に擦り寄ってくる輩は山ほどいた しかし、父はもういない。いままで擦り寄ってきた輩はもう用はないと言わんばかりに俺達のもとを去っていった あの町にはもう、 頼れる人なんか一人もいない。 だから、わずかに親戚のいる東京に逃げるように 引っ越してくることになった。 母は俺に心配されたくないのだろう 明るく振る舞っているが 実は夜な夜な一人で泣いているのを俺は知っている 父との約束―…、 絶対に母ちゃんを悲しませない。 母ちゃんは俺が守る。 見学にきたとはいえ、 今は午後4時頃の火曜日。 田舎の学校とは比べものにならないぐらいの 多くの生徒でいっぱいだ… 誰かとすれ違うたびに 視線がイタイ… 地方に生まれ 地方育ちの俺。 果たして… 東京でやっていけるのだろうか? 明日からここが俺の通う学校らしい 今は 適当に先生に挨拶を済ませ教室を廻っているところだ
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