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「そうですねー。ちなみに、《始祖》は世界に百体から二百体くらいしか存在しませんですよー」
──って事は、案外楽な闘いになるのか……?
「でもですねー、《覚醒因子》のお陰で滅する端から数が増えてるんで、プラマイゼロなのですよー」
「まあ、そんなこったろうと思った……」
この日幾度目かの脱力を経験しながら、澄輝は空になった食器を下げる。夕食が終わり、時間的にも夜の帳(トバリ)は完全に下りた。
恐らく、ヴァンパイアの活動もこれからピークを迎えるだろう。
「まあ、グダグダ悩んでもしょうがねえ。これからも、誠心誠意ヴァンパイアハントを続けるしかねえだろ」
「そうなのですよー。明日も学校早いので、さっさと休みましょうねー」
──はぁ、めんどくせえ……
ぶっちゃけ、澄輝は学校へ行くのが憂鬱だ。気まずい別れ方をした瑠奈の事もあるが、《薔薇十字団》の任務と学業は精神的にこたえる。
しかし、学校という機関に属する事は、数々のメリットがあるので捨てがたいのだ。その一つが、噂というこの街に潜む危険に関する情報。また、自分の身を社会に溶け込ませるという目的もある。
「……ところで、お前も明日何かあるのか?」
「はい。私立星嶺学園(ホシミネガクエン)に転校するのですよー」
「嘘だろ……」
澄輝は、遙火の言葉に一瞬耳を疑った。
彼は、現在星嶺学園の二年だったりするのだ。
「同じクラスになれるといいのですー」
「……悪夢だ……十二の試練の始まりだ…………うおおおお! 神様のバカヤロー!」
澄輝の心からの絶叫が、住宅街に木霊(コダマ)した。
しかし、彼の受難は何も今日始まったばかりではないのだが……。
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