†一章† この世界の裏の裏

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 が、しかし、 「よう、羽間」  事態は、突然の闖入者(チンニュウシャ)によって中断された。  澄輝が自分の肩を叩いた張本人の方へ向くと、見知った短髪が笑顔を浮かべている。 「……何だ、高野?」  歩くスピーカーという異名を持つ男、高野隆志(タカノタカシ)の姿があった。 「何だとは何だよー、爽やかな朝の挨拶に決まってるじゃないか」  快活な笑いと共に、隆志はその大きな手で澄輝の背中をバシバシと叩く。 「いや、お前の目的は…………コレだろ」  澄輝が遙火の方へチラリと視線を向けると、傍目には無表情な顔が彼を向く。  隆志は虚を突かれたようにうろたえると、取り繕うように口を開いた。 「い、いやー、お前が女連れてるなんて珍しいなあ、と思ってよ」 「……高野、言い訳はよせ。ただし、コイツは地に堕とされた黒翼の天使か、宇宙空間を統べるダークマターだと忠告、をッ!?」  茶色く平べったい学生鞄が、鼻を砕く勢いで澄輝の顔面を打った。そのまま彼の体が傾き、地面に叩き付けられ、物凄い衝撃と音に無用な注目を周りから集める。  鼻の頭に熱を感じながら、澄輝は大の字で伸びていた。 「何トリップしかけてるんですかー。とっとと戻って来ないと遅刻しますよー?」 「へんじがない、ただのしかばねのようだ……」  打ちのめされた澄輝は、そんな事を言えば追撃が来ると知りながらも、言わずにはいられない。 「右半殺しと左半殺し……、どっちがいいですかー?」 「じゃ、左で」  即答する澄輝。ヴァンパイアの形質が現れている左半身は不死なので、遙火のこの問いには条件反射的にそう答えてしまうのだ。  澄輝がグダグダと寝っ転がっていると、突如、視界に手が差し出された。  意外な事に、遙火から。 「ほら、さっさと立つのですよー」 「ああ、わりぃ」  澄輝は体の土埃を払いながら、遙火の手を取り立ち上がる。  その光景をうなだれながら見ていた隆志は、ぽつりと一言囁く。 「なんだ……オメーらデキてんのかよ」 「ばっ! 馬鹿言うなよ! 誰がこんなやつなんかと────  そして、言いかけた澄輝のみぞおちに、無情にも遙火の拳打が炸裂する。 「そうですよー、だ、誰がこんなのなんかと……!」 「そこで何故、俺を殴る必要がある!?」
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