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「ビッグニュース、ビッグニュース! 二年に転校生が来るぜ! しかも、喜べ男子諸君。かなりの上玉だぜー」
歩くスピーカーの声は、恐らく壁を貫いて隣接する教室にも届いただろう。
クラスの男子が沸き立ち、あちこちで騒ぎが起きる。
「……だがよー、そこの羽間の野郎と知り合いみたいでよー、デキてそうな雰囲気なんだぜー」
突然声のトーンを落とした隆志に、クラスが静まり返った。
そして、無数の視線が澄輝を磔(ハリツケ)にせんとばかりに彼の全身を貫く。
すると、恭は同情するかのように目を伏せ、息を吐くと、
「理解した。それは朝からご苦労だった」
そう言って、澄輝を労(ネギラ)った。
その言葉の重みを噛み締めながら、持つべき物はただうるさいだけの友達ではなく、理解者なんだと再認識する。
その時、教室の戸が開き、担任の村上雅之(ムラカミマサユキ)が姿を見せた。同時にチャイムが鳴り、生徒が各自の席に戻ると、朝のホームルーム開始を告げる。
「おー、皆揃ってるなー?」
間伸びしたやる気のなさそうな声が、教室にゆき渡る。
「まあ、四月は行事もないし、学校もそんなに楽しくないだろうが、今日は喜べー」
教職者としての立場を無視した言葉を連ねる雅之。
そして、澄輝は果てしなく嫌な予感がした。
「転校生がクラスに来るぞー。入って来い、火之神ー」
瞬間、クラスの大部分で歓声が上がると共に、澄輝は盛大な溜め息を吐きながら机に突っ伏した。
しかし、クラスの関心が転校生に集まる中、御崎瑠奈の視線が常に澄輝に向けられていた事を、彼は知らなかった。
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