†一章† この世界の裏の裏

15/21
前へ
/104ページ
次へ
「ビッグニュース、ビッグニュース! 二年に転校生が来るぜ! しかも、喜べ男子諸君。かなりの上玉だぜー」  歩くスピーカーの声は、恐らく壁を貫いて隣接する教室にも届いただろう。  クラスの男子が沸き立ち、あちこちで騒ぎが起きる。 「……だがよー、そこの羽間の野郎と知り合いみたいでよー、デキてそうな雰囲気なんだぜー」  突然声のトーンを落とした隆志に、クラスが静まり返った。  そして、無数の視線が澄輝を磔(ハリツケ)にせんとばかりに彼の全身を貫く。  すると、恭は同情するかのように目を伏せ、息を吐くと、 「理解した。それは朝からご苦労だった」  そう言って、澄輝を労(ネギラ)った。  その言葉の重みを噛み締めながら、持つべき物はただうるさいだけの友達ではなく、理解者なんだと再認識する。  その時、教室の戸が開き、担任の村上雅之(ムラカミマサユキ)が姿を見せた。同時にチャイムが鳴り、生徒が各自の席に戻ると、朝のホームルーム開始を告げる。 「おー、皆揃ってるなー?」  間伸びしたやる気のなさそうな声が、教室にゆき渡る。 「まあ、四月は行事もないし、学校もそんなに楽しくないだろうが、今日は喜べー」  教職者としての立場を無視した言葉を連ねる雅之。  そして、澄輝は果てしなく嫌な予感がした。 「転校生がクラスに来るぞー。入って来い、火之神ー」  瞬間、クラスの大部分で歓声が上がると共に、澄輝は盛大な溜め息を吐きながら机に突っ伏した。  しかし、クラスの関心が転校生に集まる中、御崎瑠奈の視線が常に澄輝に向けられていた事を、彼は知らなかった。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2218人が本棚に入れています
本棚に追加