傘子

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  うちの大学には、変わった人がいる。 名前は、傘子(かさこ)。 もちろん、本名ではない。 いつも傘をさしている女性(ひと)なので、誰かがそう呼び始め、それが広まったのだ。 他にも傘女とか、さしている傘が真っ黒なので烏(からす)と呼んでいる人もいるらしい。 でも、誰も傘子の本名を知らない。 それでも、傘子はこの大学では有名人だ。 その理由が、先ほど言った「いつも傘をさしている」ことにある。 雨の日はもちろん、晴れの日だろうと曇りの日だろうと天気に関係なく、彼女は毎日傘をさしている。 季節も関係ない。 春、夏、秋、冬、いつでも傘をさして歩いている。 しかも、彼女は年がら年中長袖長ズボンだ。 真夏のどんなに暑い日でも。 時々、スカートのときもあるが、そのときは真っ黒のタイツを履いている。 さらに、手は手袋で覆われており、肌色の部分は顔だけだ。  
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