十三番目

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「そういうことだから」 凍てつくような声だった。ほうける俺の脇を抜けて合成獣を通り越え、クラウスに並ぶ。 「どういうことなんですか……」 どうしてそんなところに居るんですか。秘策はどうしたんですか。リコさんは味方じゃなかったんですか。それじゃあ、まるで。 「秘策ってのはね、こういうことよ」 リコさんの足元が隆起し、勢いよく伸びた蔦が俺の鳩尾を打った。 体が折れ、膝を着く。胃液が逆流しそうになるのを必死でこらえるが、次の瞬間には俺は無様に地面を転がっていた。頭から温かいものが流れ、顔を伝う。それが血だと理解する前に体、足、腕と滅多打ちにされる。どこか折れたかもしれない。右腕は動かない。どうしてリコさんが……。 次々と地面を突き破って伸びる蔦は今や視界一面を埋め尽くす。それらは俺をからめ捕り、リコさんの眼前に突き出した。 「言ったでしょ。世界がひっくりかえるわ、って」 「どうして」 そればっかり、と退屈そうにすると後は任せるわ、と残して立ち去る。無数の蔦は引っ込む間際に手当たり次第に会場へ叩きつけられ、砂煙でリコさんの背中を隠してしまった。 「程よく痛めつけてくれましたね。合成獣の出番が無くて残念です。それでは、一緒に来てもらいましょうか」 「近寄るな!」 立ちあがろうとするが膝が笑ってしまう。声を荒げたものの、恰好がつかない。遠くでは派手な爆発音が止まない。クラウスと共に現れた奴らが暴れているのだろう。誰かが助けに来てくれるなんて考えないほうがいいだろう。 「おや、まだ動けるのですか。仕方ない、足の一本ぐらい無くともいいでしょう」 この野郎、好き勝手言いやがって。 顎で指された俺へ向かって合成獣は歩みを進める。双頭から唾液で濡れた牙が覗いた。それで俺を噛みちぎろうってことか。 洒落にならん。人間の骨肉などどうということもないだろう。噛みつかれたが最後だ。しかし、焦れば焦るほど体は上手く動かない。やがて合成獣は俺の足元へたどり着くと、その強靭なアギトを開いた。いくつもの鋭利な歯が並ぶのが見える。 「くそっ」 悪態に対して、クラウスはニッと笑った。 「やれ」
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