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「お考えの通り、クラウスは私たちの仲間でした。他の黒衣の者たちと同じように」
「それじゃあ、今までの」
お察しの通り、と彼女は遮った。
「全ては世界を救うため」
「何が世界のためだ! どうしてロアや皆に手を出したんだ!」
それは仕方のないこと。平然とそう言ったアリカに俺は言葉を失った。
微笑したアリカは唐突に切り出す。
「そして貴方も、国の秘密を知った」
自身の顔が蒼白になるのが分かった。転がっている汚れたビンを見ると、全く血の気の無い顔が映っている。イヴから聞かされていた秘密を知った者の末路。そのことが頭を過った。俺はこれからどうされるのだろう。秘密を知ったからには消されてしますのだろうか。いやしかし、秘密に近づいたクラウスを保護したと言った。俺はどうなるんだ。アリカの目的はなんなんだ。
俺の顔色を見ると、アリカは苦笑いしながら手を振った。
「誤解なさらないで下さいませ。私は貴方に危害を加える気はございません。ですから、どうか安心して下さい」
その言葉の真偽は別として、俺は気持ちを落ちつけようと努めた。どのみち俺はあそこで死んでいた身なのだ。今さらどうされようが関係ない。
「落ち着くまで、どうかお休みになって下さいませ」
口調や声にどこか俺は懐かしさのようなものを感じていた。俺は過去にアリカに会ったことがあるのだ。それなのに、俺はそのことを忘れている。彼女はおいおい思い出せばいいと言ったが、それはどういうことなのだろうか。
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