罪と罰

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「最近ここに棄てられたようです」 「どういうことなんだよ! 説明してくれ!」 思わず怒鳴ってしまった。最近棄てられた? 意味が分からない。これを俺に見せて何を伝えたいんだ。そのためにここへ連れてきたのか。 「これは実験の失敗作です。実験に使おうにも、すでに魔力すらも通わず動物にもおとる存在になってしまった者たち」 また実験……。 頭が狂いそうになった。どうしてこんなにも酷いことが平然と行えるんだ。一体誰が、何のために、そもそもどこから連れて来るんだ。どうして誰もそのことに気付かないんだ。 「未だに魔法の開発は続いています。私が何を言っているのか、真実に辿り着いた貴方ならば分かるでしょう」 アリカは踵を返すと、元来た道をたどり始めた。もう耐えられないのだろう。  しばらく無言の時間が続いた。アリカは初めに俺を連れてきた場所に来ると、壁に立てかけてあった板をどかした。その裏には地下に続く階段が伸びており、真っ暗な空間へと続いていた。アリカに従って降りて行くと、やがて一つの部屋に辿り着く。中にはベッドがひとつだけあり、室内には他に何もなかった。 「ここに住んでいるのか」 「いいえ。特定の場所に身を落ちつけるだなんて、今の私にはそんなことは出来ないのです。ところどころに身を休める場所はありますが、心を休める場所はありません」  唯一の家具に腰を下ろすと、アリカは俯いて言った。 「貴方も、ああなっていたかもしれないのです」 どういうことだ、と言おうとしてハッとした。国の秘密を知った者は処分される。人体実験は続いている。その両方を考えた時、効率よく実験体を手に入れる方法が見えてきた。 「そういうことか……。この国は……」 腐ってやがる、という言葉を続けようとして思いとどまり、飲み込んだ。俺がクラウスに言ったセリフを思い出したからだ。
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