罪と罰

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「じゃあ、アリカはどうして無事なんだ?」 「私は数少ない実験が成功した例です。そう言いましいても、彼らは私がなんの魔法を手に入れたのか気付かず、それがたまたま脱走するのに適していた。そうでなければあそこから逃げ出すことはかないませんでした」 俺はアリカから離れたところに腰を下ろした。 「彼ら、というのは?」 「それを今、探っているのです。組織についてはある程度把握出来ていますが、背景に誰がついているのか全く分からないのです」  世間の知らないところで非人道的な行為は続けられている。それを黙って見過ごせるものか。しかし、実験が失敗したときの姿が記憶に焼き付いて頭から離れない。俺も捕まればああなってしまうのか。父さんや母さんだけでなく、俺に関わった人までも犠牲になるのではないか。そう思うとなにも出来ない。 「貴方には罪を清算する義務があります」 「罪?」 繰り返すと、そうですとアリカは頷いた。 「諸悪の根源は十二賢者の時代にまで遡ります。全てが始まったあの時代。そこで貴方の祖先が止めることの出来なかった罪。それを今、子孫の貴方が清算するのです」 その時、壁の向こうから激しい轟音がする。 「貴方だけではありません。もちろん、彼女にも償って頂きます」 何度も何度も壁を打つような音が続き、タイルの一部が落ちたかと思うと、彼女はその壁を打ち破って現れた。 「ようやく見つけたわよ! あいつをどこにやったの!」 「ルナサ!?」 現れたのはルナサだった。アリカを睨みつけていた彼女だが、そのすぐそばに俺の姿を見つけると怒鳴った。 「そこに居るならいるって言いなさい!」 俺に掴みかからんとするルナサを、アリカが手で制する。 「おやめ下さい。貴方がたをここへ連れてきたのには理由があります」 「そうよ。どうしてこんなところに連れて来たのよ。説明しなさい!」 矛先はアリカへと向けられた。 「ルミア・バーミリオンの子孫であるルナサ様。そしてアレス・ヴァンガードの子孫であるアルヴィス様。このお二人には罪を償って頂きます」 激昂すると思っていたが、予想を外れてルナサは大人しく聞いていた。
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