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「特にルナサ様には私の言うことが何を意味しているのか、理解なされていると思います。この世界は間違っている。変えなければならない。罪の無い人々が虐げられ、その一生を無為に終わらせられる。だからこそ、お二人をここにお連れしたのです」
「意味が分からないわね。なんのことかさっぱりよ」
「そうでしょうか。実験はバーミリオン家の特権かと思っていましたが、違いましたか?」
ルナサは無言のまま、眉をひそめた。アリカの言葉に反論せず、押し黙ってしまった。
「ルナサ、どういうことだ」
嫌な予感が過った。俺はどうしても本人の口から否定して欲しかった。しかし、その問いに答えたのはアリカだった。
「バーミリオンの始まりである、ルミア・バーミリオン。彼女が魔法の始まり。つまり、全ての起源である実験を行った人なのです。そして、その技術は今でも受け継がれている。そして、ルナサ様も……」
「うるさい!」
俺は声を荒げていた。俺はルナサに聞いたんだ。そう言うとアリカは驚いたような表情をして立ち上がり、頭を下げて後ろに退いた。
「ルナサ、俺たちは決めなくちゃならない。この世界を終わらせるか、終わらせないか」
彼女の瞳をまっすぐ見つめ、言った。
「俺はもう、決めた」
ルナサは視線を外すと思案を巡らせるように目を閉じた。
エルノアがそうしたように俺たちは決めなくてはならない。この歪んだ世界を正すために、祖先が築いた世界を正すために、覚悟を決めなくてはならない。誰もが望む世界のために何を犠牲にしようとも進まなければならない。これまでの全てを、穏やかな生を捨て贖罪の道へと進むために。
開かれたルナサの瞳には覚悟の色が浮かんでいた。
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