休暇の憂鬱

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  「どうして私ではダメなのですか!」  普段は物腰の柔らかい彼女が声を荒げる。好意を向けてくれるのは嬉しく思うが、俺には想い人がいる。それに聡明にして容姿端麗ではあるが、その性格には裏がある事を俺は知っている。もはや裏と呼ぶには足らず、歪んでいる。 「……ミーア、ですね?」  ルミアの濁った瞳に殺意が灯る。もう何を言っても無駄だった。前回はカチュアが襲われ大怪我を負わされた。その前はエリー。  兄弟のように育ってきた俺たち13人のうち、残ったのはミックとディア、そしてミーアだけ。他はルミアを恐れ、家から離れてしまった。  ルミアを拒む度に身近な犠牲者が出る。彼女にはもう俺以外が見えていない。俺に世界の広さを教えてくれたのは他でもないルミアなのに、彼女は小さな自分だけの世界に閉じ籠ってしまった。幻想の、俺を抱いて。 「ルミア、もう止めてくれ。また家族として暮らそう。皆も戻って来てくれるから」 「いいえ。ルミアはアレス様さえ居て下さればいいのです。そして、カチュアもエリーもキャロルも必要ではありません」  始めは女を排除しようとしたルミア。今では男すらも俺に近付けようとしない。ルミアに対抗出来るミックとディア、そしてねじ伏せることの出来るミーアだけが残った。
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