休暇の憂鬱

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   あぁ、マズい。  空いている為に見通しのいい店内で視界に入らない訳もなく、俺と王女と目が合ってしまう。  何故王女がこんな場所に居るかは理解出来ないが今はどうでもいい。最後は喧嘩別れみたいな感じだった相手にどう接したらいいんだ。しかも、一度呼び止められた時は逃げちゃったし。  説教されるのも癪(しゃく)に障る。  昼飯を諦めて俺は席に着かず店のドアを閉めた。するとほぼ同時に、席を立つ音と重なる「お代はここに」という王女の声が聞こえた。  耳を澄ますと荒い足音がこっちに向かって来る。  これはマズい。癪(しゃく)に障ったのは向こうだったか。  何も街のど真ん中で説教されることもないし、そもそもあの王女の相手をしてやるのは気が滅入る。聖人君子を気取っているがその実、平気で人を傷付ける。  ここは俺のホームグラウンドだ。捕まる訳がないだろう。  すぐさま俺は走り出し、路地裏に飛び込む。遥か背後で「待ちなさい!」と聞こえた気がしたが無視だ。
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