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記憶に描かれた地図を頼りに狭い道を行くが、生誕祭の準備の資材が邪魔で走りにくい。所々が封鎖されている為に進路変更を余儀無くされ、曲がりに曲がり、自宅の方角が怪しくなってきた。
ここまで来れば王女も追って来れないだろう。
一息ついて、来た道を戻って自宅に向かう俺。かなり離れてしまったがまだ何とか帰れる。今度は勘を頼りに行くが、予想外にも王女は執念深かった。角を曲がった先に、怒りを露に仁王立ちしている。
「見付けました! 待ちなさい!」
月並みではあるがここは敢えて言わせてもらおうか!
「待てって言われて、待つ奴がいるか!」
踵(きびす)を返して再び路地裏を疾走。女の子に追いかけられるなら、もっと違うシチュエーションを切に希望する。
全力で走ってはいるが、少しずつ縮まる距離。小柄な王女が有利な路地裏に逃げ込んだのは失敗だったかもしれない。
「どうして逃げるんですか!」
「どうして追いかけるんだ!」
不毛な言い争いを続けながらも足は動かし続け、そろそろ息が上がりそうになる。
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